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第8回;精神を聴く [本日の1枚]

本年最後の記事はこれ。音楽にて終わりたい。
年末といえばわが国では馬鹿の一つ覚えのように第九、それもベートーヴェンのそれが演奏される風潮があるが、ワンパターンに気付くのもそろそろだろう。かといって同じ第九でもブルックナーやマーラーあたりのそれをここで紹介するのも、やはり年末第九の風潮に迎合するようでそういう気にはなれない。

というわけでわが道を行く。

第8回はこれ。

J・S・バッハである。1,000曲を超える彼の作品の全てを好きなわけではないし、多作家にありがちな作品ごとの類似点、というかワンパターンなところもあったりするのだが、古今東西、数多くの作曲家による数多の作品あれど、そこから最も精神的なものを感じるのがバッハの作品であるのもまた事実。

中でも今回紹介するパッサカリアは演奏次第では最も精神的かつ神々しい光を放つもので、バッハの作品中、どれか一つだけと言われれば躊躇なく私はこれを選ぶ。

だが演奏は選びたい。今回のリヒターによる1978年に録音されたこの演奏は、この作品から私が感じている上記要素を最も完璧に表出したもので、リヒター自身による異演を含めても最高の演奏と言える。

この盤には他に、一般受けはしないかもしれないがトッカータとフーガ ニ短調BWV538<ドリア調>とコラールパルティータ<ようこそ、慈悲深きイエスよ>BWV768という、やはり魅力的な作品が併録されており、渋く深く、時には壮大かつ劇的に、これ以上は考えられないほどの演奏がなされており、これらの曲の演奏を選択するに当たって、もはや他盤の入り込む余地はない。

尚、この盤は3曲でトータル約50分とやや収録時間がやや短いが、このCDに関して言うならば持続する緊張と集中を伴った超名演だけに聴き通す方も疲れるというもの。また同レーベルへの、当盤の演奏を含んだリヒターによるバッハのオルガン作品集が纏まったセットとして出ており、価格面も含めて入手し易くなっているが、無理をして他曲を詰め込んで全体の統一感を損ねるくらいならこのままの方がよい。

選曲・演奏・そして録音と揃った超名盤である。


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